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みどりの通信 2025年3月号 春をむかえに/気候変動と作型

春をむかえに

  寒さと乾きでなかなか大きくならない菜花をちょっとずつ摘み摘み、風に乗って漂ってくるロウバイや紅梅のにおいをかいで、春の兆しを必死であつめる2月でした。

 この時期恒例の温床踏みも、春をむかえに行くような仕事です。2畳ほどの四角い枠のなかで山の落ち葉と稲わら、鶏ふんや米糠を重ね、水を撒いては踏んで1メートルくらいの高さのベッド=温床をつくります。踏んで数日すると、さまざまな微生物が有機物を分解する熱でぽかぽかに(電気もガスも使っていないのにあたたかい!といつも感動します)。

 温床ができるとトウモロコシにシソ、ナス、ピーマン、トマト、かぼちゃ、ズッキーニ…と怒涛の種まきが始まります。あたたかな温床は寒さが苦手な夏野菜たちのベッドになるのです。多少寒くても芽を出すたくましいレタスやキャベツなどと違い、夏野菜はデリケート。卵をあたためる親鳥のきもちで、しぜんと種を扱う手も優しくなり、がんばって芽を出してくれよと祈るように一粒ずつ苗箱に種を落としていきます。

 春のあいだ温床でぬくぬく育った夏野菜の苗が畑におろされるのは5月頃。汗ばむくらいの陽気になっていることでしょう。

 まだまだ寒い2月の最終週ですが、しごとを通して春を招き入れているような、その先の夏をすかし見ているような、1年が動き出すなあと期待に胸ふくらむ季節です。

 …と書いておいて、3月頭の天気予報に雪だるまが3つ並んでいるのを見つけ、戦々恐々。雨は欲しい! でも雪は怖い! 何ごともなく春が来ますようにと、やっぱり祈るしかできません。 (照手)

 

候変動と作型

 2月の野菜セットに「冬キャベツ」というチラシを貼ってキャベツをお届けしていました。「とくみつ」と「ひめみつ」という品種のキャベツをうちで勝手にそう呼んでいたのですが、これらは9月下旬に定植したものでした。

 ふつう、キャベツは8月中旬~9月上旬までに定植するのが定石なのですが、その時期に植えたキャベツがことごとくハスモンヨトウの食害に遭い、日に日に苗が消えていきました。このままでは冬にキャベツが食べれなくなる! とダメもとで植えつけ時期を逃した苗をひと月遅れで定植したのでした。

 今までなら寒さで生育が停滞し、結球せずに終わりましたが、あたたかい秋のおかげかすくすく成長。霜に当たると生育が止まってしまうので、その前にビニールトンネルで保温したところ、年末に結球がはじまり、1月下旬から無事に収穫できました。1カ月遅れの定植となったので、虫害も少なく、気温の低下とともに雑草の勢いもなくなり、栽培が非常にラクでした。

 夏がどんどん長くなっているので、もしかしてこの作型、ブロッコリーやカリフラワーにも応用できるんじゃないか…と考えると、恐ろしい夏も少し待ち遠しくなるような。酷暑や害虫をかいくぐって冬にたどり着くことが非常に難しくなるなかで、一筋の光が見えたような気がしました。

 気候変動を嘆いてばかりいられないので、いまの気候に合うような品種を選んだり、植えつけ時期などを変えたりといろいろ試してみたいと思います。 (友亮)