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みどりの通信 2023年4月号 野菜をだます/百姓と戦争

野菜をだます

 4月に野菜をとるのはけっこう難しく、セット再開時に「ちゃんと野菜が揃うかな…」と毎年不安になります。というのも、この時期の野菜は、野菜が本来持つ「種をつくって子孫を残したい」という習性をだましてつくるからです。

 例えば大根。4月どりの大根は、去年の12月下旬にまいたものですが、そのままだと冬の寒さで花芽をつくり、4月には種をつくるため花を咲かせ、根はスカスカになってしまいます。そこで種まきと同時に、トンネルや不織布で保温します。トンネルの中とはいえ、朝夜は氷点下。「こりゃまずい! 種をつくって子孫を残さなきゃ!」となって花芽をつくる(=春化)のですが、日中になるとトンネルの中は30℃近い高温に。「あれ?こんなにあたかかったら種をつくんなくてもいいじゃーん!」となり、春化が打ち消される(=脱春化)というわけです。

 とはいえ、曇天が続くと日中あたたかくならずそのまま春化…ということもあるし、トンネル内が暑くなりすぎて生理障害が出ることもあるので、こまめに換気したり…と、とにかく手がかかります。

 そのぶん、上手くできたときの感動はひとしおで、今年も初物の大根がうまいことうまいこと。上の部分は短冊切りでお味噌汁に、先っぽのほうはすりおろして水けをしぼり(しぼり汁は味噌汁に)、納豆に混ぜて醤油とちょっとの梅肉を入れる、という「大根づくし御膳」を楽しんでいます。(友亮)

 

百姓と戦争

 以前、月刊誌の『現代農業』に、シベリア抑留体験をつづった徳島県の農家、樫原道雄さんの手記が掲載されていました(*)。

 青年時代に兵隊として旧満州へ渡った樫原さんは、敗戦後、シベリアへ捕虜として連行され、4年間強制労働に従事することになります。捕虜となりシベリアへ行く前に渡り歩いたという満州各地の収容所周辺には大平野が広がっており、ちょうど豊かな稔りの秋を迎えていました。樫原さんはそこでトウモロコシや大豆、ロシヤヒマワリなどが実をたわわにつけている光景に圧倒されたそうです。

 「考えてみれば、ついこの間まで、私たちが命がけで戦場を駆け巡っていたときも、この畑では青空の下、慈雨に潤い、太陽の恵みを受け、こんな平和な自然の営みが続いていて、今こうして豊かな稔りを迎えている。それに引き換え私たちは、この素晴らしい大地と自然の営みを守るために営々と精魂傾けてきた人たちの努力を軍靴で踏みにじり、人殺しの戦争をしていたのだ。」

 無事に日本に戻れたら、決して人と争うようなことはせず、平穏を祈りながら百姓に精を出そう。そう思ったと書いてありました。

 ソ連軍の追撃を受けながら、おびただしい人馬の屍を乗り越えていったという樫原さんが見た光景と、満州各地で見たという豊かな稔りの景色。その両方が鮮やかに目に浮かび、なんとも言えない気持ちになりました。

 それから78年。敵基地攻撃能力を持つことも防衛費増額に多大な税金が使われることも気がつくと勝手に決められていました。じりじりと、日々少しずつ、また新たな戦争へと世界が、日本が向かっている気がしてなりません。

 「武器を捨てて 野にかえろう。」

 人を傷つける道具ではなく、自然から必要なものを少しずつちょうだいしながら生きよう。

 そんな気持ちを込めて、あらゆる戦争にノーをいうために、友人とささやかな反戦ステッカーをつくりました。個人的につくったものですが、もし欲しい方がいましたらお声がけください。 (照手)

(*)現代農業2015年8月号。