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みどりの通信 2023年2月号 こころのともし火/「有機農業」ってなんだ?

こころのともし火

 先日の最強寒波で春一番の菜花・コウサイタイがお亡くなりに。ほかにも大風でビニールトンネルが開いて葉物が寒さにあたってしまったり、温存していたタアサイがアブラムシにたかられていたり、2回目の高菜漬けを失敗してしまったりと、この間、意気消沈すること数え切れず。春のお楽しみの絹さやえんどう&スナップえんどうもこの寒さはこたえたようで息を吹き返してくれるだろうか、春以降もどうなるやらという不安が出てくる出てくる…。

 寒くて晴れ間の少ないこの季節、気持ちもどうしても暗い方向へ持っていかれてしまいますが、白菜漬けはうまくできた、あっつい梅醤番茶が凍える身体に沁みた、なんて小さな喜びをともし火みたいにして、なんとか生きていかねばと思うこの頃です。

 いま時期は、生育が勢いよく進む春から秋のように新しい野菜がどんどん出てくるということがなく、寒さに強い根菜類とキャベツや白菜が定番で、かぼちゃや芋などの貯蔵野菜を入れて…という地味めなセットが続きます(地味でも味が濃いと言ってくれる方がいて救われます…)。こうした期間アメリカでは、出荷を休みにして、その間の経営も支えてもらうためにお客さんと年間契約を結ぶ「CSA(コミュニティ・サポーテッド・アグリカルチャー)」という仕組みがあるくらい。我々はそれとは違いますが、季節や気候によりセットのバラエティに強弱ができても年間を通じて定期でとっていただくことで支えられているので、同じような心持ちです。

 スーパーを見ればあちこちから集まった野菜が常にたくさん並んでおり、いつでも何でもあるような気持ちになりますが、同じ地域においては、あるときはあるし、ないときはないわけで…。

 環境に左右されつつも、どん詰まり感があるこの季節を越えて、みなさんとまた春の喜びを分かち合えたらと思っています。(照手)

 

「有機農業」ってなんだ?

 先日、『うかたま』という食の雑誌に載っていた農業史研究家の藤原辰史さんの記事を読んだのですが、とてもよかったのでご紹介。お題は「今『オーガニック』を選ぶ意味は?」というもの。自分たちの営農や販売においても大事にしたいと思う考え方でした。(友亮)

 

 1970年代、日本では公害が大きな社会問題になりました。農業においても、化学肥料や化学農薬が多用された結果、土壌や水質の汚染、生態系の変化など環境問題が深刻になります。そんな状況の中、化学肥料や化学農薬を使わず、地域資源を生かした持続可能な農業として取り組まれたのが有機農業でした。

 また、その頃の有機農業の担い手は、農業が人を殺す技術につながらない、ということも強く意識していました。背景には、戦争時に火薬をつくっていた企業が、火薬と同じ材料で肥料を生産していたり、トラクタが戦車の技術を応用してつくられていたり、農薬が毒ガスと同じ化学物質だったり…といった状況もありました。(中略)そんな状況を打破するのが、大きな技術に頼らず、土壌の力に即した営みである有機農業であると考えたのです。そしてそれを買う消費者との提携が、有機農業の継続的な営みを支えました。(中略)

 自然を切り開き、労働者を低賃金で働かせるグローバルな農業が今、社会のベースにあります。それに対抗しうるのが、地域の自然の中で循環することで持続可能となる有機農業と、それを支える消費活動です。

 子どもたちには「安全な食べ物」だけでなく、循環的な自然環境の中で、他人を傷つけないで生きていける社会が必要です。有機農業やオーガニックを選択することは(中略)、子どもたちが生きる未来の社会への投資でもある。そんな広いビジョンにつながっているのです。(『うかたま』vol.69 p96-97)