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みどりの通信 2022年12月号 ひめみつとふゆみつ/無事な一年

ひめみつとふゆみつ

 キャベツがおいしいです。

 「ひめみつ」という初めてつくる品種を11月中旬からセットに入れているのですが、サクサクの食感と強い甘さにびっくりしています。特にせん切りキャベツのおいしいこと。ソースひたひたのアジフライを巻いて食べたらなんぼかおいしかろう…と妄想しながら、畑でむしゃむしゃ食べています。

 名前に「蜜」とあるように糖度が8度にもなる品種ですが、ひめみつのあとに待ち構えているのが「ふゆみつ」(初挑戦)という、もっと甘い品種になります。

 毎年冬になると「日本のパンと畑のスープ」(白崎裕子著)に載っている「焼きキャベツのスープ」(*)をつくります。甘みを蓄えた厳寒期のキャベツでつくるのが最高においしいです。ふゆみつでつくるスープは、どんな味になるのだろう?と、すくすく育つふゆみつを見ています。セットには12月中旬から入る予定です。(友亮)

 

*キャベツをじっくり焼き、冷たい昆布水を注いで塩を効かせて火を入れて、ごくごく弱火で30分煮て完成。

 

無事な一年

  東京と群馬県上野村を往復しながら暮らす哲学者の内山節さんが、いつかこんなことを書いていました。

《かつて、農村においては「無事」に一年を迎えられることこそがなによりも喜ばしいことだった。農業は基本的に同じことの繰り返しで、経済が「発展」するわけでもなく、新しいものを獲得して「向上」するわけでもない。それは明治以降の日本がお手本としてきた生き方と異なるものだ。》

 毎年変わらずに春、夏、秋、冬と季節が巡ること。それとともに毎年同じものを植えつけて、同じように収穫すること。何も「事」が起こらない=「無事」こそが尊ばれてきたといいます。農家となり、毎年各地で起こる異常気象や災害を目の当たりにしながら、この言葉が身に染みるようになりました。

 今年は大きな台風にもあわず、大雨で畑が流されることもなく、ひどい干ばつもありませんでした。6月末に異常な暑さになったり、例年より冬があたたかかったりと、環境が少しずつ変わっていっている実感はありますが、それでもなんとかこの地で野菜を育てられたこと、変わらず皆さまに野菜をとっていただけたこと、本当にありがたいことだなと思います。

 もちろん、野菜を見る目を養ったり、栽培の技を磨くという意味では、さらに「深化」&「向上」したいと思っています。今年は大豆と麦に挑戦したり、ポリマルチなしの作付けを増やしたりしました。

 また、私たちが普段二人きりでやっている畑仕事をお客さんとともに行なう「畑びらき」という新しい試みも始めました。外から来た方たちと触れ合うことで、新しい風が入ってきて活性化する感じ。当たり前になっている作業を新鮮な目で見られるよい機会になりました。リピートしてくださる方もおり、前に植えた高菜があんなに大きくなっている!とか、前に除草をしたにんじんがこんなに育っている!と野菜の育ちや季節の巡りを一緒に体感できたのもよかったです。今後も続けていくつもりなので、ご興味のあるかたはぜひ。

 

 そうでない方にも野菜セットと共に、畑の香りをお届けしていきたいと思います。来年もどうぞよろしくお願いいたします。(照手)

 

ドタバタの年末、隙間を縫って近所の方にしめ飾りづくりを教わりに行きました。来年の無事を願いつつ
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