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みどりの通信 2022年2月号 物置ハウスにて/凍みる冬

 

●物置ハウスにて

 近隣の高齢農家の方に、物置きハウスの骨組みをいただく代わりに、ハウスの中の片付けと解体を頼まれました。扉を開けてみると、埃をかぶった防風ネットやビニールシート、壊れた草刈り機に噴霧器などがうず高く積まれていました。欲しい資材は使っていいよとのことだったので、まずは使えそうなものとそうでないものの仕分けをしました。年代物の資材が多かったからか、少し引っ張っただけで劣化したプラスチックがボロボロ落ちるものがたくさんありました。こうしてマイクロプラスチックがあちこちに飛散していくわけですね…。自分たちが使っている資材もいずれはこうなるのかと思うと、ゾッとしました。

 ゴミに仕分けた農業用のマルチ、トンネル、防風ネットにビニールシート。これらのプラ製品は、泥付きのためリサイクルができず、燃焼処分するしかありません。民間のゴミ処理所に持ち込んだところ、処分料がキロ90円。200キロ以上あったので、2万円弱かかりました(費用は相手方に負担してもらいました)。

 農薬・化学肥料を使わずに通年でセットをつくろうとすると、こうした資材を使わざるを得ないのが現状です。とても便利なものですが、今回の片付けで資材の負の側面を身をもって体感しました。今後買う資材は、なるべく長く使えるものや土に還るもの、資源としてリサイクルできるものを選ぼうと思いました。と同時に、資材をできるだけ使わない農業のやり方も模索していきたいです。(友亮)

 

●凍みる冬

 毎年寄居の冬は寒い寒いと書いていますが、今年は特に寒いです。2月に入れば少しはゆるむかなと思っていましたが、中旬まで毎日マイナス3~4度予報が出ています。家や畑のまわり、配達先で、会う人会う人と「えらい(すごい)さむいね~」「風がつめたいね~」と背中をこごめながら言い合っては、この寒さは自分だけのものではないのだと少しほっとします。

 畑の野菜たちもなんとか耐えてはいますが、先日ちょっと悲しいできことが。先月の通信で寒いからこそおいしい漬物ができる云々…と書いていたのですが、2度目の高菜漬けを寒さで駄目にしてしまいました。塩水は濃度が高くなればなるほど氷になる温度も下がる(「氷点降下」というそう)ので、塩水に漬かった状態の漬物は、あたりが氷点下になっても凍らないという仕組みがあります。が、年末に塩漬けした高菜の水が上がらないうちに連日の寒波に襲われたため、氷点降下の恩恵にあずかれないまま凍みてしまったのです(日陰にある漬物小屋は日中も気温が上がりません)。凍みた高菜は組織が壊れてぐんにゃりとした食感で、1回目のものと雲泥の差。泣く泣く処分しました。畑でも防寒を怠ると野菜を駄目にすることがありますが、漬物も同じ。食べものの出来/不出来はちょっとした気温差で変わってしまうものなのだと実感した冬でした。

 …と寒さにやられてばかりではいられません。この寒さをいかして何かできないかな~と凍み大根に挑戦しました。凍み大根は東北地方の乾物で、輪切りにしてゆでた大根を戸外に干してつくります。厳寒期に干し、大根の水分が凍る/溶けるを繰り返すうちにふかふかのスポンジ状になり、大根のうま味も増し、煮物に入れると煮汁がしみこんでさらにおいしくなるというもの。春の田植えの煮しめに入れるとおいしかった、という話を聞いて一度やってみたいと思っていました。今のところカビもはえず、みるみるしぼんでいっています。寒いからこそできるおままごと。気温に振り回されるばかりじゃなくて、その時々の気候を生かし、おいしいものをつくる知恵や工夫を身につけていきたいと思ったのでした。(照手)