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みどりの通信 2021年7月号 おじさんの雨がっぱ/ラフで行こう

おじさんの雨がっぱ

 雨が降り続き、土が水を含んでぬたぬたになる季節がやってきました。畑では一歩踏み出すたびぬかるみに足を取られ泥だらけ。服が濡れて寒いわ、足腰は悲鳴を上げるわで散々です。

 この辛い作業を何とかしたい!と思い、今シーズン、パタゴニア社の雨がっぱ(オーバーオールタイプ)を買いました。「生地は薄いのにめちゃくちゃ頑丈」、「とても軽いし、泥汚れがすぐ落ちる」など、農家や牡蠣漁師が口コミで大絶賛。それを読むうち頭の上にモクモクが現れ、その中には泥まみれになりながらも、服の汚れや冷えを気にせず、快適に収穫や草刈りをする自分がいました。

 気になるお値段は…17600円! かっぱなのに17600円! と驚きましたが、半年ほど悩み、清水の舞台から飛び降りる気持ちで3頃に買いました。

 届いてからは嬉しくて、妻子が寝静まったあとテーブルにかっぱを広げ、すだちハイボールを飲みながら眺めたり、裏返してまた眺めたりしていました。

 雨が降るたびかっぱを出そうかと思うのですが、「まだ大丈夫!(もうちょっと眺めていたい)」と、なかなか下ろせずにいました。

 そして梅雨入り後、畑がぬたぬたなってにっちもさっちも行かなくなってしまったので、つい最近畑デビューしました。軽くて動きやすく、水をビシバシはじく。泥まみれになっても、ホースの水で汚れが簡単に落ちる!

 夜にかっぱは眺められなくなりましたが、梅雨の畑仕事は快適になりました。(友亮)

 

 

ラフで行こう

 農作業に追われるのはいつものことですが、植物の成長が著しいこの時期はとくに、草刈りに収穫、果菜の世話などいろいろなことに追われ、追い越され、一周まわってまた追われているような日々です。そうすると家のことは後手後手に、夕飯どうしようかなと思う間もなく夕方になり、毎日ぐらぐらしながらよくわからない料理をつくっています。

 こういうとき、ひと昔前の人はどうしていたのかなとよく考えます。今のように便利な調理家電もクックパッドもない時代。大家族で毎食大量のごはんを用意しなければならなかった主婦たち。

 手元にある本*を見てみると、その季節にあるものを、身近な調味料(塩、味噌、醤油)で煮たりゆでたり漬けたり焼いたり、たまに揚げたりしている。夏なら輪切りのきゅうりをたっぷり入れた冷や汁。そうめんに煮たなすを入れたなすそうめん。伏見とうがらしとじゃこの炊いたん…。風土が違えば食べられている料理も違いますが、共通しているのは、「この料理をつくろう」と食材をそろえるのではなく、そのときに豊富にある食材で日々の料理ができているということです。油や肉をそんなに使っていないのも今と違うところ。そして季節になれば、先にあげたような料理を毎日のように食べているのですが、あまり食べ飽きるということがないようなのです。これは、その日その日で味つけや食材に揺らぎがあることや、胃もたれするような食材をあまり使っていないからかもしれません。

 SNS全盛の今、気付けばなんとなく「映える」料理をつくらなきゃ、毎食違うものを用意しなきゃと力んでいたような気がしますが、ひと昔前の普段の食事はとてもシンプル。そのあり方がなんともいさぎよくて気持ちがいい。農家なんだしあるものを簡単に料理すればいいよと昔の暮らしの記録にはげまされた気がしました。(照手)

 

*全国の家庭料理を聞き書きした『伝え継ぐ 日本の家庭料理』シリーズ(農文協)。昭和30~40年代につくられていた、地域の人たちが100年先もつくってもらいたい、食べてもらいたいと願う家庭料理のレシピと料理にまつわるエピソードが掲載されています(全16巻)。私が会社にいたころから今も編集に関わらせてもらっている本でもあります。