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みどりの通信 2021年5月号 初夏の試練/だから私は草を抜く

初夏の試練

 春の陽気でぬくぬく育っていた野菜たちに、試練が訪れました。4月27日、季節外れの降霜(遅霜)。前の晩は、寒さに弱いジャガイモ、ズッキーニなどに不織布(お布団のようなもの)をかけて回り霜対策をしましたが、大きく育ちすぎて不織布をかけられなかったトウモロコシは大ダメージ。6月中旬から収穫を予定していたぶんのほとんどが枯れてしまいました。

 5月1日は雹(ひょう)が降りました。レタスやコマツナなど、葉が軟らかくて傷つきやすい野菜は、あらかじめ設置していた防虫ネットが雹をガードしてくれたので無傷でした。しかしながら大きく育ちすぎたトウモロコシは、枯れた葉っぱに小さな穴がポツポツ…。とどめを刺されました。というわけで、今年のセットにトウモロコシが入るのは、7月上旬になってしまいそうです。(友亮)

 

だから私は草を抜く

 新緑の美しさに目を細めていた時期はあっという間に過ぎ去り、そこらじゅうでみどりがごうごうしげり、草取り草刈りに追われる日々です。先日友亮から「アナタが〝マルチは嫌い〟と言うから、今年は特にマルチなしの定植が多いよ。草取りヨロシク」と言われました。なるほど、最近の作業で草取りが多いのは私の一言が原因なのだそうです。

 マルチとはマルチングフィルム(mulching film)のこと(ここではプラスチック製のマルチを指しています)。定植した野菜への泥はねや野菜まわりの草を抑えてくれたり、春先に地温を揚げて野菜の生育を助けてくれたりととっても便利な資材なのですが、私のマルチ嫌いには訳があります。昨今のプラスチックフリー熱の高まりもその一つですが、根っこには過去にあったこんなことが起因しているのかもしれません。

 幼い頃、新規就農したての私の両親が畑を借りたばかりのときのこと。両親の前に同じ畑を使っていた人がマルチを片付けないまま畑にうないこんでしまったようで、マルチの細かなゴミが畑じゅうにわんさか。マルチは分解されないのでそのまま残っているのです。そうしてそのマルチゴミを拾うのを私も一緒に手伝った記憶がぼんやりあります。幼心に「ああなんていう徒労&不毛感…!」と思ったような(うないこまずゴミに捨ててくれればよかったのですが)。

 一度プラスチック製のマルチの便利さを覚えてしまうとなかなか手放せませんが、このマルチは土に還らず一、二回使ったらゴミになること、見た目にもなんだかあまり美しくなく、できるだけ使いたくないわけで、そのぶん自分の身体を使って草とりをがんばらねばなりません。(照手)

 

◆補足◆

 マルチにもいろいろあって、プラスチック製のマルチフィルムと同じような形状で、日光や土壌微生物によって水と二酸化炭素に分解される「生分解性マルチ」というものもあり、レタスやカリフラワーなどには使っています(高価なのでじゃんじゃん使えませんが)。

 麦わらや稲わらなども「有機物マルチ」といって野菜の根もとにおけば草を抑えてくれます。有機物マルチは保湿効果&夏は熱を逃がしてくれる効果もあり、使った後も回収の必要がなく、その後畑を肥やしてくれるとってもエライヤツです(見た目も清々しいのです!)。うちでは麦も稲もつくっていないため、麦わらや稲わらは地域の農家の方に分けてもらいにいっています。ということで来月は麦わら集めです。