· 

みどりの通信 2020年12月号 妖怪芋っ喰いのはなし

 今年も残すところ、わずかとなりました。本年も菜園みどりのの野菜セットを購入してくださり、どうもありがとうございました。

 目に見えないウイルスの存在により、不安な日々が続いています。働き方や暮らし方に変化が求められるなか、変わらず野菜セットをとっていただけたこと、とてもありがたかったです。

 今年は大きな台風はなかったのですが、代わりに?害虫が大発生。手で捕まえるだけでは追いつかず、ナスが大減収したり、カリフラワーやキャベツが全滅したりと新型コロナとは関係のないところでてんやわんやでした。這う這うの体で家路につくことも多かったのですが、そんななかでメールや振替用紙の通信欄に書いていただいた野菜の感想、配達中にいただくお言葉に大変励まされました。お返事できていなくても野菜でお返しできればと思ってセットをつくっています。来年もどうぞよろしくお願いいたします。(友亮)

 

●妖怪芋っ喰いのはなし

 あるところに芋屋寅次郎という男がおったんだと。寅次郎は芋や野菜をつくって売るのを商いにしていたんだと。畑作業の合間におやつを食べるのが楽しみで、昨日は歌舞伎揚げ、今日はアルフォートってな具合に毎日おやつを買って食べていたんだと。

 ところがカミさんに「自分で野菜育ててるんだから買わないで済ませたらどうだい」と言われたそうな。寅次郎は考えて、売りに出せない小さい芋をオーブンで焼いてみたんだと。そしたらこれがたまげるほどうまかったそうな。「こりゃあいいや」。それから寅次郎は毎日自分で焼いた芋をおやつに食べるようになったんだと。その勢いときたらものすごくて、朝オーブンにぎっしり芋を詰めて焼いていると思ったら夕方にはもう無くなっていて、夜にはまた新しく芋が入っているってな具合だ。「いくらなんでも食べ過ぎじゃないかい」見かねたカミさんが言うと、「あれは妖怪芋っ喰いの仕業だよ。うまい芋を食べるって言うから、うちの芋がうまい証拠だよ」と寅次郎は笑っていたんだと。

 「へん。何が妖怪芋っ喰いだ。自分で食べてるのは知ってんだよ。まあいい、私もちっと食べて見よう」。カミさんが芋を食べてみると、これがまあ、たまげるほどうまかったそうな。それから寅次郎が見ていないあいだにカミさんも芋を食べるようになったんだと。

 しばらくすると、寅次郎の家の小さい芋は無くなってしまったんだと。それで今度は「お客さんに出す芋の味見もしてみよう」と大きい芋も焼き始めたんだと。するとこれもたまげるほどうまかった。それを見ていたカミさんも食べだし、出荷用の芋もどんどん減っていったんだと。さすがに在庫が気になった寅次郎が「最近芋の減りが早い気がするね」と言うと、「妖怪芋っ喰いの仕業じゃないかい」とカミさんはとぼけたんだと。そうして二人して毎日芋を食べているうち、芋屋寅次郎の家の芋はすっからかんになっちまったそうな。

 売るものがなくなった寅次郎たちはどうなったって? さあね。ただ、その頃から村中で妖怪芋っ喰いに芋を食べられたっつう話を聞くようになったんだ。家に芋がある人はせいぜい気をつけるんだね。

 これでえんつこもんつこ、さけた。

*180度オーブンで小さい芋なら40分、大きい芋なら1時間ほど焼くとおいしい焼き芋ができます。皆さんに届けられるよう、食べ過ぎないように注意します。(照手)