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みどりの通信 2019年10月号 台風19号のこと/なぜ農薬を使わないか(2)

 

 台風19号が去った次の日はばかみたいにさわやかで、太陽の光がきらきら、気持ちの良い風が吹いていました。

 畑の方はというと、さわやかにはほど遠い状態で、きゅうりの樹も、ようやくとれると思っていたインゲンの樹もぼろぼろ。タネをまいたばかりの小松菜はウネごと流され、大根も泥水にのまれ、見まわる私たちも少し歩けばあっちのぬかるみで足をとられ、こっちで足をとられ…といった有様です。

 あれだけ大きな台風だったから、作業小屋もハウスも無事だっただけよかった。のですが、皆さんに入れる野菜たちへの影響は大きく、物はどうしても少なくなると思います。また、秋冬野菜にかけていた防虫ネットが風でめくれあがってしまったので、虫の被害も増えるでしょう。

 台風が去って行って思うのは、農業はいつだってどうにもならない大きな自然が相手なのだということ。ここまでの台風は滅多に来ないとしても、毎年必ず台風はや

って来るし、雹が降ったり、大雪があったり、大雨が続いたり、常に私たちに都合のいい天気が続くわけではないのです。考えるだけで恐ろしいですが、それでもずっと農業を続けている人たちがいること(災害を機に辞めざるを得ない人もいますが)が光に思えます。

  自然に勝つだなんて無理な話ですが、大変なときでも打つ手を何かしら持っていられるように、やわらかい頭と、さっと動ける体を鍛えていきたいです。(照手)

 

●なぜ農薬を使わないか(2)

 私が農薬を使わないもう一つの理由は、「ヒトへの影響がありそう」だからです。

 昔の殺虫剤は虫に直接かけなければ駆除できませんでしたが、最近のものは「浸透移行性」といって、植物の体液に入り込む性質があり、雨で流されにくく長く効きます。そのため、収穫した野菜に殺虫剤の成分は残り、体液に溶け込んでいるため洗っても落ちないのです。近年の研究では、調査した子ども全員の尿から浸透移行性のあるネオニコチノイド系殺虫剤(以下、ネオニコ)の成分が検出されたという結果が出ています。このネオニコは、虫の脳に作用して殺すのですが、同じ成分がヒトの脳や神経の発達にも悪影響を及ぼす恐れがあるようで、これが子どもの発達障害の要因になると指摘する研究(※1)もあります。

 これらの研究が根拠となり、EUでは、2013年からネオニコ系農薬3種の使用が禁止されました。そのあとに続くように、カナダやアメリカ、ブラジルでも一部地域ではネオニコの使用が禁止され、お隣の韓国や台湾でもネオニコ3種の使用が制限されました。ところが日本では、2015年以降、ネオニコ成分の食品中の残留基準値が緩和されています…。「予防原則」の立場に立って規制に踏み切る諸外国に対し、日本は「ヒトの健康に問題ない基準である」と主張しています。(友亮)

 

※1「発達障害の原因と発症メカニズム」黒田純子、黒田洋一郎緒(河出書房新社)