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みどりの通信 2019年9月号 なぜ農薬を使わないか(1)/台風が去って秋が来た

●なぜ農薬を使わないか(1)

 私は農薬(※1、ここではとくに殺虫剤)を使わずに野菜をつくっていますが、それには三つの理由があります。

 一つは、殺虫剤では虫に勝てないと思うからです。

 昔(1990年以前)の殺虫剤は、虫に直接かけないと退治できない、雨が降れば剤が流されて効果がなくなるというものでした。最近のやつ(※2)は違って、畑に殺虫剤をまくと、野菜はその成分を根や葉から吸い上げ、体液に殺虫剤の成分が溶け込みます(浸透移行性)。その野菜を食べた害虫は、コロリ。剤が雨で流されないから効き目長持ち。いわば、野菜そのものが殺虫剤になるわけです。この農薬が登場したことで野菜の食害が一気に減り、大規模栽培が可能になったと聞きます。

 ところが今から6年前、キャベツを食害するコナガ(イモムシ)の一部に、浸透移行性殺虫剤が効かないコナガ(通称スーパーコナガ)が現われ始め、わずか一年で爆発的にその数を増やしました。私は当時、日本一のキャベツ産地である愛知県田原市の農家を訪ね回っていたのですが、「これをかければ大丈夫」という農薬が効かなくなったことで現場は大混乱。畑一枚まるまる収穫ができない人もいました。昨今は、殺虫剤抵抗性を持ったアブラムシ、ハダニなども増えているようです。

 人間がいくら知恵を絞ったところで、虫たちはいつか凌駕してしまいます。自然には勝てません。農薬会社はそれならもっと効く新しい農薬をとなるのでしょうが、あまりに不毛ないたちごっこに思えます。

 菜園みどりのでは農薬を使わず、防虫ネットで予防し、手で退治するというパワープレイで害虫と戦っています。いまのところ勝率は6割くらい。早く勝率8割ほどになりたいものです。次回は農薬を使わない、二つ目の理由について書きます。(友亮)

 

※1 農薬は、殺虫剤と殺菌剤、除草剤があります。菜園みどりのでは農薬を使いませんが、購入した種子に殺菌剤が塗布されている場合があります。海外で採取した種についた病原菌を日本に持ち込まない(植物防疫上の理由)などの理由からです。こういった種を使うことはあります。

※2 ネオニコチノイド系、ジアミド系、カーバメート系などの農薬。コナガが抵抗性を獲得したのはジアミド系。アブラムシはネオニコチノイド系、ハダニはネオニコとカーバメート系に抵抗性を獲得した。

 

 

●台風が去って秋が来た

 台風が連れてきた猛暑のあとは、これまでの暑さが嘘だったかのような過ごしやすい気候になっています。日中暑いなと思うことがあっても夕方にはすっと気温が下がる。陽もだんだん短くなり、もうちょっとと思って作業していると暗くなっていたり。

 畑の様子も変わってきました。スーヨーきゅうりとトマトは退場。夏の間とれすぎて困ることもあったトマトですが、なくなるとさみしくなります。きゅうりはⅤアーチというトゲの少ない品種になりました。ナスは、ずっと同じ品種、同じ樹のものをとっていますが、秋はゆっくり育つからか、味が濃くなった気がします。蒸して皮をむいたなすにおろし生姜と醤油をたらりとかけただけでおいしかったです。

 オクラはしぶとく7月からずっととれています。最初は屈みながらの収穫で、腰が…とか思っていましたが、今は背伸びしても届かず、樹を引っ張っては実をとるという収穫スタイルです。

 そして新たにとれだしたのが、三尺ささげにかぼちゃ、ごぼう、落花生。葉物は小松菜、ちんげん菜。最近はささげの炒めたものやかぼちゃの煮たの、小松菜のおひたしなどをよく食べています。

 十六夜のまんまるな月を見ていたら(十五夜は雲がかかって見えなかった)そろそろ里芋の煮っころがしも食べたくなりました。そんな、秋冬野菜が待ち遠しいこの頃です。(照手)